『天空の城ラピュタ』パロ

 シータ → カカシ
 パズー → イルカ
 飛行石 → 写輪眼



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まるで体重を感じさせず俺の腕の中にふってきたあんたは、淡い銀色に包まれてとても綺麗で儚げで、本当に天使かと思った。けれど、薄っすらと開かれた瞼の奥には紅い瞳がメラメラと、

誰にも侵されやしない

と強い意志を持って揺れている。

けれど、すぐに瞼は閉じられ、その体を包む淡い光は消えた。途端に腕の中で増した重みは天使のものではなく(そもそも天使なんか見たこともなかった)、確かな重力で下に落ちようとする。
慌ててその体を抱きかかえ、なんとか安全な場所に運んだけれど胸は騒ぐ一方だ。
何かが始まるのだと、そう予感せずには居られなかった。

「三代目!!空から女の子・・・じゃねえや、なんか人っぽいのが降ってきた!!」


 

天空の写輪眼カカシ



てっきり寝ているかと思ったカカシさんがこの見張り台へと続く梯子を登ってきている。吃驚して慌てて手を差し伸べた。
「カカシさん!わ・・・っと、大丈夫ですか?」
強風に煽られた体を強く引き寄せると、カカシさんはなんなく見張り台の中に降り立った。
「ん。大丈夫」
ニコリとカカシさんが笑う。けれど、その端正な顔立ちに凡そ似つかわしくない白い眼帯が左目を覆っていた。
抉られたしまった写輪眼。あんなに大切にしていたのに俺は何も出来なかった。
白い眼帯を見る度に、どうしてあの時守れなかったのかと自分に対して強い憤りを覚える。
「寒いでしょう。こっちへ」
せめて寒さだけでも凌いでやりたいと、毛布を広げたら見かけによらず屈強な体躯がすかさず滑り込んできた。
「あったかい」
そのままギュッと抱き込まれ、心臓が小さく跳ねるのがわかった。なんだかソワソワする。
「カカシさん、操縦しにくいです」
「そんなつれないこと言わないで」
たしなめるように言っても恨めしげに言葉を返され、更に強く抱きしめられる。
(あ!)
俺に密着したカカシさんの胸が、トクトクトクと早い鼓動を打つのを背中越しに聞いた。
(緊張を・・・)
平気そうに見えるが、実際は俺よりずっと緊張しているのだろう。
「本当はね、ラピュタなんて見つからなければ良いと思ってる」
「カカシさん!」
「そうすれば・・・、ずっとイルカ先生と旅を続けてられるでしょう?」

(はぁ?)

一瞬耳を疑ったが、カカシさんの鼓動がいっそう早く打つのを聞いて、小さくため息を吐いた。
きっと怖いのだろう。怖くて怖くて溜まらないはずだ。早い鼓動がカカシさんの恐怖を訴えてくる。
けれど表面上はいつもと変わらない穏やかさで、恐怖を俺にひた隠しに軽口を叩いてくる。
こんなけなげな姿を見せられては・・・・、あばらが軋むほど強く抱きしめられても、離してくれとは言えない。
「カカシさん・・・、大丈夫です。俺がついてます」
腰に回されたカカシさんの手にそっと手を重ねると、カカシさんはちょっと変な顔をした。
「あんた・・・俺の言った意味がわかってる?」
「わかってます!二人でラピュタを悪者の手から守りましょう!!」
力強く言い切っても、カカシさんはますます眉間の皺を深くし「全然わかってないし」と呟く。
「カカシさん?」
「あー・・・うん、まあ、いいや。あんたが鈍チンなのは今に始まったことじゃないし。それに、二人でって言うのは悪くないね。うん、悪くない」
鈍チン呼ばわりはいささか気に障ったが、カカシさんは勝手に納得しているようなので水を差すことはない。この人が変わっていることこそ今に始まったことじゃないだろ。
「カカシさん、俺のポーチから縄を出してください。それで俺の体とカカシさんの体を結んで・・・」
言い終わらない内にカカシさんはずばやく俺のポーチをひったくって縄を出した。

「まかせろ!!!」

力強い言葉通り、カカシさんは俺の体をとんでもない力で絞めあげてきた。

「いてぇぇぇえ!!!しかも動きにくいし!!!」
「あんたが言ったんでしょ。我慢しなさいよ」
バカ力を発揮しながらも表面上はとても穏やかにカカシ先生が笑う。
(すげぇな、この人)
呆然と嬉しそうな顔を見つめながらな一抹の空しさが胸を過ぎるのを感じた。





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